著者のアナット・バニエルさんは、フェルデンクライスメソードで有名な、モーシェ・フェルデンクライス博士(物理学者、心身統合に関する先駆者)に師事された方です。
が、この本はフェルデンクライスメソードそのものを紹介しているのではありません。
バニエルさんはそれをもとにさらに研究を深め、『ニューロ・ムーブメントと「9つの大事なこと」』というメソッドを提唱されていて、その内容が記された本です。
ムーブメントは動きですが、ニューロというのは、脳を構成する神経細胞のことだそうです。
「私たちの学習能力は20代の初めにピークを迎える、その後は下がっていくばかりで、私たちには、なす術がない。」という考え、 ありますよね。
音楽学習のピークはもっと早いと思われているかもしれません。
しかし、近年脳に関する研究成果が次々と発表され、私たちの脳は生涯を通して進化し、変化を続ける、 ということが、実証されてきているのだそうです。
この本の内容を実践して、私も進化したいし、生徒の皆さんとも共有できたらなあと思っています。
小さい子供は大変よく動きながら、新しいことをどんどん習得していきます。
この時の子供、エネルギー、好奇心、創造力がはじけ、活力に満ちて、わくわくする経験を重ねています。
この活力は、脳が1秒間に180万もの新しい回路をつなぐことからもたらされるのだそうです。
一方、人間は、ある程度の発達をとげると、惰性運転、自動操縦モードにはいるのだそうです。
これは人間が生活していく上では、必要なことです。
ただ、 同じパターンの繰り返しはマンネリを生み、 脳の欲求が満たされず、ストレスが生まれ、 エネルギーの消耗がおこります。
これがひどくなると、体の不調、心の不調につながっていきます。
しかし、私たちの脳は、いくつになっても、新しい考え方、動き方を発見し、作り出す力が備わっていると、アナットさんは言っています。
脳が目覚める、つまり、脳が新しい回路をつなぐための方法がある、 というのです。
この本では、その方法を9つに分類して書かれています。
その内容の一部は従来からの、何かを習得するときのコツのようなものともちろん共通はするのですが、脳科学の視点から説明されていて、なるほど!と納得。
さらに、動きのレッスンの方法が図解されていたりもしていて、とても面白い本です。
次回から、「9つの大事なこと」、レポートしてみたいと思います。